2011年6月6日月曜日

なぜジャージーなのか?

 今年も放牧が始まったので、少し固い話になりますが神津牧場の牛飼いの原点についていくつか紹介してみたいと思います。神津牧場の特徴の一つはジャージーに特化していることですが、そのあたりの訳について紹介します。
 神津牧場では、現在、100haの草地に、搾乳牛90頭をはじめ約200余頭のジャージー種のみ飼養しています。明治38(1905)年にはアメリカ、カナダから優良種畜を45頭導入し、一挙に改良を進めたという記録もあるように、連綿と日本ジャージー種とでもいうべきものを作ってきました。ジャージー種は、ホルスタイン種に比較して小型で性質が温順で運動性があるため飼養しやすく、粗飼料利用性に富み、高い脂肪分、無脂固形分の牛乳を泌乳する利点を有しています。また、早熟で繁殖性がよく長命であるとも言われています。
 そして、当初からこれらを普及するために種畜の供給を行ってきました。春秋2回の競売市も開いていたという記録があります。現在でも希望者には売却しています。数年前には御料牧場にも行きました。今頃愛子さまもそれらから搾った牛乳を飲まれているのではないかと思います。


 さて、神津牧場ではジャージー種に特化しているのは、創設のときから現在地の山奥にあり、傾斜地ばかりで放牧しかできないため高い放牧適性が求められたことと、目的が日本人の体格改善のために乳製品(バターの製造)を供給することにあったため高い乳成分が有利であったことによります。120年の歴史の中には相当な情勢変化があったことは想像に難くないところですが、立地と目的にかなった牛を使って、省力的な放牧という飼養方法を早くから確立し、周囲の情勢に左右されることの少ない身の丈にあった経営を貫いてきたことが、生き延びた大きな要因だと考えられます。
 神津牧場では、昭和35年より人工授精による増殖に切り替えています。国産の精液を使うようにしていますが、近交を避けるため輸入精液も利用しています。資質向上のため適宜外国からも個体の導入を行ってきましたが、現在は飼養牛はすべて自家産です。昭和20年代から飼養ジャージー種中より優良な系統牛の選抜育成(多乳・高脂肪)を開始し、現在に及んでいます。因みに、創業当時からの乳量の推移は図に示したとおりですが、改良効果は歴然としています。この乳量水準は放牧下での値で、当牧場産の牛を舎飼した場合には約1000kgは多いと言われています。逆に言うと放牧という運動に約1000kg分のエネルギーが使われているということです。

0 件のコメント:

コメントを投稿